義胡府国風土記~旅と外出~

5年間放置していました

久しぶりの輪行で諏訪湖、諏訪大社など

こんにちは。

この夏、自転車を新しくしたので久しぶりに輪行活動が活発になりつつあります。

かつては「遠くに行ってこそ」とばかりに、北海道や沖縄にも飛行機で輪行していましたが、回数を重ねるたびに自転車が痛み、航空業界の預け荷物取り扱いの闇が透けて見えそうだったので、やっぱり無難に鉄道利用、現在は県内~隣県くらいの範囲で走っています。

輪行とは自転車持参で公共交通を利用する旅スタイル。自転車は必ず専用のバッグに収容する必要があります。

 

birdy classic 知多半島

8月に愛知県内は知多半島に走りに行ったのですが、暑すぎてコロナ以前に熱中症で死んでしまいそうで、涼しくなるのを待って今回は長野に向かいました。

 

◆◆地図では上、諏訪大社下社に行く。

 

下諏訪駅

最終的な目的地は長野市ですが、先ずは諏訪湖周辺を軽く走って向かうことにしました。やって来たのは下諏訪駅。涼しい。

 f:id:takagikofu:20201003232815j:plain

相変わらず何も調べず向かったのですが、さすがに諏訪大社があることくらいは知っていますし、上社・下社に分かれている事も知っていました。でも地図で言えば上(北)にある方が下社だという事は把握しておらず、さらに下社が秋宮と春宮に分かれていることは知りませんでした。

 

因みに上社が本宮と前宮に分かれているのは何となくは知っていました。つまりは諏訪大社って【下社=(秋宮・春宮)】【上社=(本宮・前宮)】の四つの神社に分かれていて、諏訪湖の北と南に分かれて鎮座しているのですね。

 

諏訪大社下社

諏訪大社下社

先ずやって来たのは下社の秋宮。諏訪大社は四社ともそれぞれ個性があるのですが、いずれにも共通しているのは比較的市街地に立地していてコンパクトであるという事。伊勢神宮熱田神宮出雲大社のように厳かな参道を暫く歩く・・・というようなスケールではなく、鳥居をくぐると割とすぐに社殿があります。

 

諏訪大社下社

その中でも下社秋宮は宿場町の中にありながらも緑に囲まれているので落ち着いていて、四社の中では最も凛とした雰囲気に感じられました。これは神楽殿というそうですが、本殿の様に立派です。

 

諏訪大社下社

諏訪大社といえば御柱祭。山から切り出され曳かれてきた巨大な御柱が次々と急な斜面を下る「木落し」など、日本でも屈指の勇壮さと熱狂ぶりを誇る祭事。その御柱は各社の四隅に建てられていて、もちろん秋宮でも見ることが出来ます。この左側にも一本、見えませんが拝殿の奥にも対で2本建っています。

 

諏訪の象徴でもある御柱はこの地で暮らす人々の矜持や自尊心のようなものが形となり静かに聳えている・・・そんな感じがします。

 諏訪大社下社

奥に楼門のような立派な拝殿があります。先ほどの神楽殿で引き返さずこちらで参拝しましょう。

 

◆◆下社秋宮とそっくり春宮

秋宮の次は春宮に向かいますが、隣接しているものだとばかり思っていたら1キロは離れているとの事。歩きであれば想定外の1キロは中々荷が重いけれど、今回は自転車なので気が楽。

下諏訪の街

中山道の宿場町沿いを行けば到着するようでしたが、しっかり道を間違えてしまい、宿場町の古い町並みを味わう事は出来ず。その代わり下諏訪の街を見下ろす中々景色の良い道を進むことが出来ました。

 

諏訪大社下社 春宮

下社の春宮は、参道が山に突き当たったその麓にあり、そこまで大きな社ではありませんでした。小さな街には一つくらいはありそうな神社のような感じですが厳かな雰囲気に格式の高さを感じます。

 

秋宮と春宮は同じような造りで、拝殿の前に神楽殿があり重なりあっています。秋宮同様に神楽殿が拝殿かな・・・と思って参拝すると「裏にもっと立派な社があるぞ」ってなります。秋宮・春宮に関しては同じ図面で計画されたのではないかと言われているので、構造は同じ、差異は彫刻に表れているような事がHPに記載されていました。

諏訪大社下社 春宮

手前に見えるのが神楽殿

 

諏訪大社下社 春宮

楽殿の奥に拝殿

秋宮とそっくりな社殿の配置を備える春宮。

 案外スペースの関係で・・・って事かもしれませんが、お賽銭を2回徴収出来る可能性が高まるので、増収に効果のあるしたたかな意図がこの配置にはあるのかもしれません。 他にもいろいろと特徴的な様式があるようですが、無計画に軽い気持ちで立ち寄ったのでその辺りはまた機会があればじっくり見てみたいと思います。

 

◆◆下社から上社へ諏訪湖沿いを走る

birdy classic

諏訪大社下社はコンプリートしたので、上社に向かいますが、ここからが輪行の本領発揮。下社まで諏訪湖沿いを自転車で向かいます。

 諏訪湖

諏訪湖

諏訪湖は穏やかな湖です。四方を山に囲まれた土地にぽっかりと大きな湖があるのは何とも不思議ですが、この地方の人々が抱く諏訪湖への畏敬の念が諏訪大社を祀り、独特な祭事や神事を生み出したのではないかと勝手に思っています。古事記などを読むと諏訪の地は古代の早い時期から神々の争い事の舞台となっているので、きっと有力な豪族がこの地を治めていて、他所者から見ると豊かで手に入れたい土地だったのかもしれません。

と。物思いにふけりながらのんびり走っていましたが、下社から上社までは10キロ近くあります。距離的には何て事ないのですが「昼までに四社すべて参拝できればいいな」という甘い見込みだったので、思ったより時間がかかりそうです。

 

予想外だったのは湖岸の快適そうな周回路は自転車乗り入れ禁止だった事。割と控え目な標識なので脇道から侵入してしまい、何百メートルか自転車走行禁止レーンを走ってしまいました。仕方ないので車道を走って上社に向かいますが、湖周りを自転車で走る場合は反時計回りがお勧めです。時計回りだと道路を挟んで湖を眺めるので景観の面でもイマイチだし、湖岸に出るのに一旦道路を横切らないといけないので何かと面倒。今回は時計回りルートだったので、景色よさそうなポイントでは横断歩道まで行ってしっかり信号を待たなければならず少々煩わしかったです。次回は反時計回りで。

 

◆◆地図では下社より下、諏訪大社上社【本宮】に行く。

諏訪大社上社本宮

それでも1時間ほどで上社に到着しました。こちらは北参道。周囲はどこにでもありそうな街並み。栄えてるでもなく辺鄙でもなく。

 

しかし一歩足を踏み入れると、さすが諏訪国の一之宮、しかも本宮を名乗るだけあり堂々として厳かな雰囲気です。

 

突き当りの石段を上ったところが拝殿などがある拝所になるのですが、上社本宮の社殿の配置は全国的に見ても珍しいそうです。一般的な神社の配置は参道か鳥居の正面に本殿なりが正対してあるケースが多いと思うのですが、ここ本宮は参道や鳥居と正対しておらず、参道から直角に左に曲がったところに拝殿がある配置になっています。上の写真で言うと左側に参道が突き当たっている感じとなります。

 

でも何も知らないで行って「この神社変わってるな!!」て思う人はまずいないと思うし、「言われてみれば・・・」ぐらいにしか感じませんでしたが、色々と後になって調べているとこの配置が何となく謎めいた感じがしてくるのです(少し伏線)。

 

諏訪大社上社本宮

 拝所の奥にある立派な拝殿。これまた貴重な本宮固有の造りとなっていてその建築様式は「諏訪造」と呼ばれているそうですよ。

 

当初はこの立派なものが本殿だと思いましたが、よくよく調べてみると、諏訪大社の上社本宮には御神体が無く本殿というものは設けられていないとの事でした。では本宮では何を崇め祀っているのかというと、背後にそびえる守屋山が御神体であるという説もあれば、諏訪出身の神職に就く人物(偉い人)を現人神として崇敬していた時代もあったとの事でどうも定かではない。そもそも守屋山が御神体だったという記録も一切無いとの事だし、非常に謎めいた歴史があるようです。

 

この時少し違和感に感じたのは、拝所で参拝する方向が御神体説のある守屋山の方を向いているのではなく、守屋山を右横に見て参拝しているようなポジションだった事。所説はあれど御神体=守屋山であれば、拝殿は山を背にして建ち、参拝者が守屋山に正対するのが自然なのではと思いました(少し伏線)。

 

※ここまで書いといて分かった事ですが、下社の秋宮・春宮も本殿というものが無いようで、諏訪大社は調べれば調べるほど奥深い沼にはまりそうです。諏訪大社と一言に行っても実際には四つの個性の異なる神社を包括した総称のようなもの、隙間時間に軽い気持ちでちょっと立ち寄るだけでは何も理解できないのは当然で、改めてじっくり諏訪大社を見て回りたくなります。そして簡潔に書くの難しい!!

 

f:id:takagikofu:20200919123801j:plain

拝所の脇には工事中のエリアがあり、そこには拝殿に沿って続く長い回廊があるようでしたが、残念ながらどのようになっているか伺い知る事は出来ませんでした。古くは最も位の高い神職に就く人しか通れなかった回廊との事。やはり色々と独特な習慣が社殿の配置に見て取れるようで興味は増すばかりです。

 

  f:id:takagikofu:20200928084225j:plain

 

f:id:takagikofu:20200919124538j:plain

本宮の次は前宮に向かいますが、もう一つある参道から続く道の正面には八ヶ岳がよく見えました。これも後から分かった事ですが、脇道然としたこの通りが実は本宮の表参道だという事で再び違和感を感じました。

 

f:id:takagikofu:20201008112820j:plain

表参道とは、神社仏閣の参道のうち、主に正面に位置するものとありますが、この参道を進むと本宮の拝殿の後方に突き当たる形になり後正面に位置します。表参道にしては不自然な取り付け方に思うのですが、よくよく思い出すと拝殿で拝んでいた方向は八ヶ岳を向いています。

 
御神体が境内の背後にある守屋山とする説がある中で、拝む方向には守屋山が無く、その先にあるのは八ヶ岳。表参道も八ヶ岳へと続くように引かれている。勝手な思い込みかもしれませんがこの「向き」が違和感を覚えるのです。

 

f:id:takagikofu:20100915072130j:plain

沖縄で見かけた神事

少し話が反れますが、沖縄では社殿も御神体も無い拝所で海に向かって礼拝する神事がとても多く、これは海の幸に対する感謝である事はもちろん、海洋民族である祖先が渡ってきた方向、自分達のルーツである方向を示していると言われています。それ以来、拝む「向き」には秘められた大きな意味があると思っていて、それは本土でも変わらないのではと思っています。漁猟採集でルーツが海洋民族である沖縄の人達は海を向き、狩猟採集・農耕民族である本土の人々の多くは山の方向を向いて拝む。

 

特に本殿や御神体の無い自然崇拝などの古い信仰形態が残る諏訪大社のようなケースではなおのこと参拝する向きに大きな意味があり重要だと思うのですが、本宮の独特な配置に八ヶ岳が与えた影響が少なからずあるんじゃないかと思えてくるのです。

 

色々と調べ尽くしてこの記事をアップしたわけではないので、現地の詳しい人からしたら適当な見解だと思われるかもしれないけど、実は御神体八ヶ岳であったり、八ヶ岳を信仰していた時代があったのかもしれない・・・等々、社殿の配置一つで色々と想像が掻き立てられ、とにかく奥深い神社であると感じました。

 

機会があれば詳しい方とこの地を廻ってみたいものです。

 

※毎度毎度、簡潔に書こうとしているのですが、後になって色々と調べると次々と事後発見があり、内容がグダグダになってしまいます・・・文才のある人ってすごい。

 

 

◆◆諏訪大社の異端児、野趣溢れる諏訪大社上社【前宮】

いい加減長くなってしまいましたが、最後に前宮がまだ残っています。

諏訪大社上社前宮

前宮は本宮の南に位置し、自転車でもすぐに到着しました。名古屋起点だと最も奥

に感じますが、東京起点だと諏訪大社四社の中でも最も手前、先ず最初に前宮になります。四社には社格の差異はなく、参拝の順序なども特に決まっていないとの事ですが、本来であれば前宮から参拝するのがセオリーなのかも、名前からして。

 

この前宮、これまでの三社とは明らかに様相が異なります。

最初の鳥居をくぐると自然地形をそのまま利用したような感じで、整えられた厳かな参道を進んだ今までの三社とは異なりどことなく無秩序な雰囲気です。

諏訪大社上社前宮

  二つ目の鳥居のあたりは神社然としていますが、今までの三社のような絢爛な雰囲気はあまり無く、いい意味で枯れた雰囲気が漂っています。ここに社務所や授与所があり、拝殿などは鳥居をくぐってもう少し進みます。

 

暫く斜面の道を登って行くと本殿があるのですが、前宮に本殿はあります!

 

STAP細胞はあります!みたいになってしまいましたが、前宮の本殿はちゃんと本殿で、他の三社のように「実は本殿じゃないよ」ではありません。しかも鎮守の森のような繁みの中にあり、周囲に溶け込んだ野趣あふれる独特な造りになっています。

 

前宮本殿は周辺の山林と神域を遮るものが無く、斜面の道端に突然本殿が鎮座しているような感じです。本殿を囲む四本の御柱も道端に建っていて、四社の中で唯一、四本の御柱全てに触れる事が出来るんだそうです。

 

f:id:takagikofu:20200919132155j:plain

f:id:takagikofu:20200919131847j:plain

本殿前はただの田舎道で参道兼生活道路といった感じ。すぐ近くには集落もあり、社格の高い一之宮でこのような開けっぴろげな境内は珍しいなーと思うのですが、色々調べてもこの造りに関して言及しているものが少なくて意外な感じです。ただ、この辺りは古くから諏訪で最も綺麗な水が流れている地であるとの事なので、その関係でオリジナルの地形を活かしたまま現在に至っているのかも知れません。

 

※もっと全体の雰囲気が分かるように撮りたかったのですが晴天時の午後の前宮は逆光がきつすぎて本殿側を広角に撮影するのが難しいです!

 

f:id:takagikofu:20200919132221j:plain

 すぐ近くまで家が建っていて、境界も曖昧な前宮からの眺め。

 

前宮があるこの地は諏訪の神様が最初に居を構えたという言い伝えがあり「諏訪信仰発祥の地」とも言われているので前宮の歴史自体は本宮よりも長いようなのですが、かつては単に本宮の境外摂社という位置づけだったらしく、現在の「本宮に対しての前宮」と格付けされたのは明治になってからのようです。要するに諏訪大社は昔から上社と下社で「二対二」だったのではなく明治半ばまでは上社は一社のみ、近年になって毛色の違う異端児的な存在の現前宮がランクアップし諏訪大社ファミリーの仲間入りをしたという事だそうです。

 

しかし、前宮こそ古い信仰形態がそのまま残っているような感じで、前宮の方が本殿や御神体が無くてもおかしくないような感じがします。

 

f:id:takagikofu:20200919134429j:plain

そんな独自進化を歩んだ前宮。素朴で商売っ気もなく、神社施設以外なにもありません・・・と言いたいところですが、本殿のすぐ手前に最近できたばかりっぽい綺麗な芝生広場があり、お茶所も完備されています。

f:id:takagikofu:20200919134302j:plain

最も古色蒼然としていながら実はアフター参拝が充実しているのは前宮。神仏習合ではなく新旧習合といったところですが、ポツンと置かれたカボチャの置物がどこぞのアーティストの水玉の奴でも違和感がない雰囲気です。

 

意外と自由主義な側面もあるようですが、お茶所では地域のおばあさん方がワイワイと働いていて対応もとても気持ちよく、伺えば色々と地域の話なども聞けたかもしれませんがコロナ禍でもあるので今回は飲食だけして後にしました。

 

f:id:takagikofu:20201002220106j:plain

御朱印も頂いた

 これにて諏訪大社の四社をコンプリートした訳ですが、神社って現代人からするとご利益ばかりが注目されて、へんてこなスピリチュアル性を期待されがちですが、ひも解けば、かつてその地で暮らした人々の思想や信仰、生活様式が見え隠れしていてどこか謎解きのような感じがします。特に諏訪湖周辺の謎解きゲームは複雑で難易度が高そうです。

 

今回はあまりにも軽い気持ちで訪れてしまったので(いつもそうだが)、機会があればじっくりと見て回りたいと思います。名古屋からもそう遠くはないので、近いうちにもう少し予備知識を得て再訪出来ればいいなと思います。